夏期講習で偏差値は上がるのか【追記】
皆さんこんにちは.
たまには塾の先生らしく,タイトル通り夏期講習の話をしてみます.
どうやら医療系受験の子や高校受験の子なんかが僕のブログを見てくれてるみたいなんで,まじめに書いてみます.
【7/27 追記】
ラーニングピラミッドの件でご指摘がありましたので,内容を少しいじりました.
夏期講習は労働基準法違反
受験生の皆さん,その保護者の方,塾の講師をしている皆さんに問います.
夏期講習を行う意味って何ですか?
ぶしつけな質問になっていることは間違いないですし,塾講師をしている奴がこんなことを問うなんて頭の悪いことこの上なしだと思います.
なぜこんなこと言うかというと,
夏期講習はすんごい長時間労働だからです.
受験生は1コマ1時間半として,1科目20コマを3教科(90時間),一日5~6コマ(7.5~9時間)をザラにこなします.おまけに毎日それ相応の宿題(残業)を課されています.土日祝日関係ありません.お盆も受験生なら家で勉強です.
これを踏まえて,労働基準法を見てみましょうか.
・ 使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。
・使用者は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。
・使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。
出典:厚生労働省.労働時間・休日
はい,労働基準法違反です.
まぁ夏期講習を受講する人は労働者ではないですいし,何ならサービスの受給者です.
こんなんに金払う意味あるんすかねぇ...(笑)
長時間労働と生産効率
学生にとって学業は仕事です.
そして,学生にとっての賃金は知識といってよいでしょう.
では「夏期講習」という「長時間労働」が発生していると,「知識の定着」という「生産性」はどうなるでしょう?
この図をご覧ください.
出典:内閣府.平成29年度 年次経済財政報告.
この図では,労働時間が短いほど生産性が高く,労働時間が長いほど生産性が低いことを示しています.
また長時間労働の是正について,こう述べられています.
これまでの研究によれば、長時間労働の是正や柔軟な働き方の導入などWLBの取組を進めることは、大きく4つの経路を通じて企業の労働生産性の向上につながる可能性が示されている(姉崎, 201032)。
第一は、労働者のモチベーションを高める効果である。具体的には、WLB
の改善によって、士気の向上や欠勤等の減少といった効果が生じることが考えられる。第二は、企業がWLBの推進を社外にもアピールすることで、企業に優秀な人材が集まりやすくなることによるものである。
第三は、WLBを推進することにより、従業員が継続して就業しやすくなり、採用コストや初任者に対する教育研修コストが低下することによるものである。
第四は、企業がWLBの実現のために、業務の効率化への工夫や、業務分担の見直しを行うことによるものである。
内閣府経済社会総合研究所による研究等では、WLBの取組が生産性向上につながる上記の4つの経路について、実際のデータに基づいて定量的な効果が検証されている。※WLB = Work Life Balance(ワーク・ライフ・バランス)
出典:内閣府.平成29年度 年次経済財政報告.
つまり,図とこれらの文献からわかることは,「長時間労働はゴミ.バランスの良い時間でやれば生産性は嫌でも高くなる」っていうことです.
したがって,夏期講習で多くのコマ数を割いて勉強しても生産性が低いので,偏差値は上がりにくいです.
じゃあどうするか?
別に夏までに偏差値を上げる必要性はありません.最後受験するときにどれだけあるかの問題です.
じゃあ夏期講習もとい,夏でするべき勉強は何か?
それは「自分流の参考書づくり」だと私は考えています.
下図をご覧ください.
これはラーニングピラミッドと呼ばれるものです.
おそらくですが,受験生諸君がやっている勉強というのは,よくて30%地点のデモンストレーションまででしょう.
それじゃダメだってことです.教えましょう.ジャンジャン教えましょう.
でもみんながみんな友達いるわけじゃありません.
なので自分を教えるために「自分流の参考書」を作るんです.それも各教科.
どんな風に作っていくかというと,僕と全く同じ考えで同じ作り方をされているYoutuberさんがいたので映像でご覧ください.
予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」(通称ヨビノリ)
【7/27 追記】
ラーニングピラミッドのエビデンスが低いことを示す論文に関する記事があったので共有します.
私はこの記事と記事のベースになっている論文も見ましたが,確かになと納得しました.ラーニングピラミッド自体のエビデンスはほぼないといっても過言ではないかもしれません.
しかしながら,「自己流の参考書」を作ること意味がなくなったわけではありません.
皆さんは巷で「アクティブラーニング」という学習法が流行ってることをご存知でしょうか?自分流の参考書はこのアクティブラーニングの考え方を反映できていると私は考えています.
文科省はアクティブラーニングを,「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称」としています.要は「自分が疑問に思ったことを見つけて,自分の力でそれ探求しよう」ってことです.
アクティブラーニングについて詳しくは下をご覧ください.
教育課程企画特別部会における論点整理について(報告):文部科学省
これを見てもらえれば分かりますが,グループワークやディスカッションは有効なアクティブラーニングの方法であるとされています.しかし,グループワークをしようがなんだろうが,「自分が疑問に思ったことを見つけて,自分の力でそれ探求しよう」ってことは変わりません.この点に「自分流の参考書」ってのが生きてきます.
指導された内容をノートに自分の分かる言葉でアウトプットしていくと,「あれ何でこうなるんだ?」と疑問に思うことが山ほど出てきます.この疑問は先生が教え損ねた内容になっていることがほとんどです.それを自分の力で調べ,調べた内容を自分が理解できるようにノートに書き加えていく.そして作ったノートを使って問題を解く.まさに能動的学習です.
少なくとも私はこの方法を中学生から今に至るまで実践して,どの段階でも成績は上位をキープしてきています.それなりに効果はあると思っています.(急に根拠が薄いですが(笑))
細々しちゃって申し訳ないですが,高校受験の人は急いで各教科の中3の範囲を全部終わらせることができるように,このノート作りをしつつ,自学自習に励みましょう.
これを作るくらいであれば,時間をかけつつ勉強ができるので長時間労働にもなりません.
参考書を作って自分を自分で指導するという目的の下の学習なので,学習効果もそれなりに担保されますし,没頭できるのであまり辛くないと思います.
何よりノート作りって楽しくないですか?(笑)
最後に
夏期講習を受けても偏差値が上がりにくいのは構造上当たり前なのはご理解いただけましたか?
夏期講習で美味い思いをできるのは,塾の経営者だけです.受験生はもちろん,それに金を費やす保護者や,教えてる講師もたまったもんじゃありません.
こんなもんに数十万使っていると思うとバカバカしくてたまらなくなりますね(笑)
さて,夏にやるべきことは示しましたので,皆さん頑張って学習してくださいね(笑)