てっちゃんの考え方

①作業療法学生としての記事 ②教育に関する記事 ③趣味の記事

「目的としての作業」と「手段としての作業」

こんにちは.

今,大学院での研究のためにFisherさんが考案した作業療法介入プロセスモデル(Occupational Therapy Intervention Process Model;以下OTIPM)について勉強しています.このOTIPMですが,卒論で扱っており,学生って言い訳の保険をかけておきますが,結構詳しく知っているつもりです(笑) (全然分かってなかったらごめんなさい!!何でもしますから許してください!!)

 

今回はその勉強の軽いまとめ&作業療法学生さんや作業療法士の皆さんに向けた,介入の際の作業のチェックをするための記事になります.

 

作業を使う際の「目的」と「手段」って?

学校の授業でも習ったことがあるかと思いますが,作業を介入で使う際には「目的としての作業」「手段としての作業」の二つに大別されます.

 目的としての作業というのは,いわゆる対象者にとって「意味のある作業」と置き換えていいかと思います.対象者が価値や興味,役割など何らかの意味づけをしている作業を使います.「目的」というくらいなので,それができるように目標に据えることがあります.

 手段としての作業というのは,治療や支援のための媒体として作業を使うことです.例えば,片麻痺の対象者が促通のためにコインを入れる,うつ病の対象者が作業に没頭するためにアイロンビーズをやるみたいなものなんかが挙げられます.

察しのいい方ならすでにお分かりかと思いますが,作業療法の本質的に「作業」を利用するのであれば,目的としての作業を用いることが重要であるとわかるかと思います.

上記のようなこともあり,最近は目的としての作業をできる限り手段として利用できるような介入をすることが重要だと考えられています.

介入で使う作業はできる限りリアルに!!

さて,OTIPMの考案者であるFisherさんは,著書の中で以下のような図を使って作業療法士が用いる作業を説明しています.

f:id:hybridrainbow-3324:20180618211853j:plain

この図では日常生活との関連性・生態的関連性・目的を決める所在・意味を決める所在の4本をの矢印を使って介入で用いられている作業の分類を説明しています.

この図が言いたいことをざっくりというと,介入で使う作業はその人にとってできる限りリアルで,介入構造の目的や作業の意味づけをクライアントに理解してもらいましょうってことだと思います.

 

まだまだ分かりにくいと思うので,いくつか例を紹介してこの図をもとに作業を分類してみます.

Case1.左片麻痺で後ろファスナーのワンピースを着たい女性

作業療法士は左片麻痺なので,まず病衣の前開きのシャツを麻痺側から通して着る訓練をしました.この訓練を図をもとに考えてみると...

日常生活との関連性:

病衣として前開きのシャツは着ている可能性があるので少し関連あり.

生態的関連性:

文脈的におしゃれな人なので,病衣みたいなもの着ないと考えれられ,模擬的が妥当.

目的を決める所在:

作業療法がメニューを考えているので,作業療法士に所在がある.

意味を決める所在:

ワンピースを着たいのに前開きのシャツを採用しているのは作業療法士なので,作業療法士に所在がある.

Case1で用いた作業は,「とりあえず服を着る」ということに関してはクリアしていますが,「ワンピースを着る」という思いを反映した作業ではなく,非実践的あると考えられます.

Case2.職場で説明を求められ答えられず,抑うつ的になっているASDの男性

作業療法士はコミュニケーションの一環として,スタッフと日常的なコミュニケーションをとる訓練を行いました.この訓練を図をもとに考えてみると...

日常生活との関連性:

日常会話と職場でのコミュニケーションのされ方は少し異なると予想できるので関連はやや低い.

生態的関連性:

職場でのコミュニケーションをスタッフに置き換えているので,模擬的.

目的を決める所在:

作業療法がメニューを考えているので,作業療法士に所在がある.

意味を決める所在:

コミュニケーションが取れなくて困っているのを直したいと考えていると仮定すると,ややクライアント寄りとして考えられる.

 Case2はコミュニケーションに問題がある人に対してよく行われる訓練でした.しかしこの分類に基づくと,Case1と同様「職場でのコミュニケーション」に対して介入しておらず,クライアントがこのメニューの目的を理解し意味を感じているのかは少し疑問が残ることが分かるかと思います.

 

臨床場面で一般的だと思われていた作業は,意外と意味がないかもしれない...ということがお判りいただけたでしょうか?

 

意味のある作業はその作業で介入する

Fisherさんはまた,著書の中でこうも言っています.

「入手可能で優れたエビデンスは,個人因子や心身機能に焦点を当てた介入は,時間がかかるだけでなく,作業遂行のの改善への影響も少ないということを示している.つまり,研究は,作業遂行を制限している基礎的な原因が特定され治療されれば,その効果は作業遂行へと般化されるだろうという基本的か説を支持していない.」

これはつまり,意味のある作業(ワンピースを着る・職場で説明できるなど)ができるようになるために,片麻痺の促通をするであるとか日常会話のコミュニケーションをするといったような訓練を行うことは意味はない可能性があると言っています.

これは,「作業遂行ができるようになるためには,その作業をよく観察・評価をして,その作業で訓練をしましょう」というOTIPMの基本概念の根拠ともいえるものだと思います.

自分たちの使っている作業を見直そう

私はOTIPMを初めて見た時,言葉は悪いですが,日本作業療法のいい加減さみたいなものを感じました.日本の作業療法で用いている作業の多くが手段的ですし,目的としての作業でもほとんどが模擬的で,実際の意味のある作業を使って介入できている人はごく僅かです.

今一度,自分たちが使っている作業は「目的」なのか「手段」なのかを見直してみてください.また「目的」であったとしても,日常生活との関連性・生態的関連性・目的を決める所在・意味を決める所在の4本柱で考えてみて,本当に必要な作業なのかも考えてみてください.

 

最後まで読んで下さりありがとうございました.

実習と院試の勉強の中での記事なので,乱文や文脈,論理構成がが変なところもあるかもしれませんがご容赦ください…(笑)